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山蟻 [雑文]

 濃い緑の葉を四角くきれいに刈り込まれた生け垣は、板塀のようにも見える。
 道路に沿って続く生け垣は、小学校の敷地内にあって、私の背丈よりずっと高い。
 幹の下半分には枝葉がないから、目隠しの役には立っていそうもなかった。
 低いフェンスの向こう側に並ぶ様子が、何かに似ているように思った。

 通勤帰りのある晩、通りかかると生け垣に、赤い花が一斉に咲いていた。
 その日にいきなり全部が咲いたはずはないから、今まで少しずつ咲いていたのだと思う。それに気がつかなかっただけなのだろう。

 赤い花はうつむくように咲いていた。
 真ん中に黄色の大きな蕊がある。
 街灯の弱い明かりで、闇の中にぼうっと浮き上がるように連なっていた。

 ぽとり、という音の気配がした。
 振り返ると、首を落とされたように赤い花が道端に転がっている。
 落ちた花は、白地に赤を墨流しにしたような模様をしていた。
 つまみ上げ、花の中をのぞき込むと密集した黄色い蕊が、もぞもぞと動いた。
 中から山蟻が顔を出した。
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