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鳴神 [雑文]

 夜道を家へ急いでいたら、正面の空が光った。真っ暗な空に、真っ黒な入道雲のシルエットが一瞬浮かんで消えた。少しの間があって、雷の鳴る音が遠くで聞こえた。

 家に着くまで降ってくれるなよ。

 祈る気持ちで歩きだすと、自然と早足になる。
 その後も空は度々光るので、巨大な入道雲のシルエットを何度も見ることになった。夕立を起こし損ねた夜の入道雲は、水分をたっぷり含んだ大きな体を持て余し、八つ当たりをするように、こんな時間に大雨を降らせたりする。

 勘弁してくれ、という思いもむなしく、アスファルトの上に雨粒が落ち始めた。
 大粒の雨は、アスファルトにぶつかると驚くほど大きな音をたてる。雨が激しくなるにつれ、ほこりの匂いが強くなる。

 雨の匂いだ。

 家まであと少し。その少しの距離を走るように急ぐ。家に着いた途端、雨は猛烈な勢いで降り始めた。窓から外を眺める。
 アスファルトに跳ね返る雨が、街灯に照らされて水煙を上げている。見ている分には涼しげで、実際気温も下がったような気がする。とりあえず、あの豪雨に合わずに済んでよかった。

 まず、シャワーを浴びようと思う。
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