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怪火 [雑文]

 このところ立て続けに、夜に火事があった。火事があると、市内にいくつもあるスピーカーから火災発生の知らせが流される。聞いていると、みな枯草火災だった。この辺りには宅地造成前の空き地や、耕作放棄された畑が多い。今の時期はそこに枯草がはびこっている。冬の乾いた空気と強い北風。ちょっと火がついたら、瞬く間に燃え広がるだろう。

 ただ、そんなところには火の気がないはずなのだ。放火でなければ、火のついたタバコのぽい捨てくらいしか原因に思い至らない。しかも夜なのだ。昼間に捨てたタバコの火が、ずっとくすぶっていて夜になって燃え上がったか。もっとも、そんなところへ火のついたタバコを捨てたら、未必の故意を疑われかねない。

 ふと狐火のことを思いついた。この辺りは狐火がよく見られる。狐火は燃えるのだろうか。キツネの他にもタヌキやイタチ、ハクビシンなどのケモノも棲む土地だ。火を使えるケモノを、キツネとヒトに限ることもないだろう。野山に棲むケモノたちが、あわてるヒトを尻目に、競うように火をおこしているのかもしれない。
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春野 [雑文]

 山を歩いてきたよと、知人がタラの芽を置いていった。寒さがゆるむ頃に、最初に口にする山菜はタラの芽だ。山歩きが趣味の知人が、今頃になると毎年置いてゆく。山の中の、道なき道を藪漕ぎするような山菜採りではない。山歩きも、ハイキングコースや林道だ。そのついでに、道の際にひょろひょろと、細く長く伸びるタラの木からいくつかを摘む。日当たりのよいところで育つから、この辺りの雑木林では見かけない。植林のために切り拓かれた山の斜面が、見つけやすくて歩きやすく、よいのだそうだ。

 もう少し経つと田や畑の畦に、フキノトウが見られるようになる。タケノコではないけれど、ほんの少し土から顔を出したくらいがおいしい。
 ワラビ、ツクシ、ゼンマイ、ノビル。山ではなく野に出る野草もひとくくりに山菜と呼ぶそうだ。採って歩くことはないけれど、薹が立ったワラビやフキノトウを見かけると残念な心持ちになる。

 去年はヨモギを摘んで草餅を作った。
 上新粉に少しずつ水を加えながら、茹でてすりつぶしたヨモギとこねる。淡く薄い緑になった生地は、文字通り上品なヨモギ色になるが、市販の餡をつつんで茹でると濃い緑になって品がなくなる。茹で饅頭だから、噛んだ時に中から湯が飛び出して舌をやけどすることもある。元々それほど上品に食べるものでもないのだ。試したことはないけれど、一度蒸かしてみたいとは思う。

 水の引き入れられる前の田に、セリを摘む人たちがしゃがみ込んでいるところを見るようになるのは、それからもう少し後のことだ。


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